清史紀事本末明の義軍蜂起の失敗(明起義軍之失敗)
要約
順治二年六月、両京が陥ちて人心は騒然となり義軍が四方に起こったが、民兵は急ごしらえで訓練も糧も武器も足りず、まもなく敗れた。呉県の生員陸世鑰・沈自炳・沈自駉は太湖で、職方主事呉易と挙人孫兆奎は長白蕩で起こり、易は兵卒を農民に紛れさせ博洛の舟を漕がせて中流で船底を穿ち沈めた。巡撫田仰・荊本徹・張士儀らは崇明で義陽王を奉じ、任源邃・呉福之・徐安遠は太湖で、長興の金有鑑は通城王を奉じて湖州を抜き、長興を攻めて王士麟が戦死した。呉志葵と陸世鑰は蘇州を図り、魯之璵が三百人で胥門を破って入城したが満州の騎兵に全滅した。項志甯は常熟で敗死し、宗室盛瀝と盧象観は江甯・溧陽に敗れ、象観は太湖に入った。
閏月、江陰の典吏閻応元と陳明遇が拒み守り、敗れた劉良佐が降を説くと、応元は、一典吏でも故国を忘れぬのに、重兵を握り敵の先駆けとなる者にどの面下げて会えようかと罵った。黄毓祺・徐趨は行塘で応じ、無錫の顧杲は降を申し入れる王如玉らを捕らえたが賊と叫ばれ砂山の団練に殺された。常州の張龍文、余姚の孫嘉績と熊汝霖は夫役三百人を説いて県令を斬り、松江の沈猶龍・陳子龍らは壮士数千で城を守り、会稽の鄭遵謙は義興軍と号して魯王を迎え、寧紹台道于穎は富陽を回復して渡河の筏を穿ち沈め、鄞県の銭粛楽は王之仁と盟って張煌言を台州に遣わし、張国維は東陽で、崑山の王佐才ら、嘉定の侯峒曾・黄淳耀は梁得勝の兵八十四級を斬り、太倉の王湛、休寧の金声と江天一は叢山関を築き、徽州推官温璜は糧を送り、邱祖徳・麻三衡は寧国、尹民興・趙初浣・呉漢超は涇県、貴池の呉応箕は建徳・東流、青陽の龐昌允、嘉興の屠象美・銭秉・徐石麒ら、長興の方元章らは余杭を回復した。
七月、李成棟が嘉定を屠り、侯峒曾・黄淳耀は一門あげて自尽した。江西では夏万亨らが益王を奉じて建昌に拠り、羅川王が郷兵一万余を練ったが、保寧王の内応で城は陥ち、六君子の墓と題された。曾亨応・掲重熙は撫州で募兵が集まらぬうちに王得仁が来て衆は散り、楊廷麟・劉同升は贛州、劉士楨は泰和・廬陵で起こり、胡定海は徳興で敗死し、李含初は徳化・瑞昌、郭賢操は徳安・建昌を回復したが部将の内通で敗れ、瀘渓の張載述らは新任の県令を磔にした。邱祖徳は磔にされ、麻三衡は稽亭山で死んだ。八月、成棟は松江を屠り、黄蜚の兵と騙った者を入れて弁髪と知れ、沈猶竜は流れ矢に死に、李待問・章簡らが殉じた。劉一鵬は峡江・袁州を取って鄧武泰・李時興が死に、金声桓は吉安・万安を取って曠昭が死に、梁于涘は官に就けば神は滅びると言って縊れた。王得仁は臨川で曾亨応を捕らえ、屈しないので樹に吊るし射殺した。把総呉之蕃は嘉定の回復を図って敗れ、父子ともに忠節だと罵って死んだ。江陰は八十一日囲まれて兵の死者七万五千余、閻応元・陳明遇は自尽し、金山衛の侯承祖は四十の矢を受けて捕らえられ罵り死んだ。盧象観・葛麟らは太湖で敗れ、呉易・孫兆奎は陰雨で砲が鳴らず潰え、兆奎は洪承疇を一人か二人かと詰り斬られた。魏国公徐宏基も謀が洩れて殺され、任源邃らも死んだ。
九月、張天禄が涇県を襲って趙初浣が死に、績渓では黄澍が援兵と偽って城を破らせ、金声と江天一は南京で殺され、徽州では黄澍が降って温璜が一門自尽した。呉応箕は私の冠を取るなと言って死に、広徳の呉源長ら、塩城の司石磐、溧陽の銭国華・謝琢も敗死し、淮安の王翹林・繆鼎吉らは新昌王を奉じ塩城・新化を取って敗れた。十一月、陝西の孫守法が秦藩の第四子を漢中王とし、賀珍が鳳翔を回復して諸県が帰した。十二月、陳泰来は上禼・新昌・寧州・万載を回復したが姻戚の戴国士の招きで撫州に敗死した。三年、呉漢超は句容・高淳・溧水・太平を回復したが寧国を襲って潰え死に、金有鑑は長興で戦死し、鎮国将軍常巣は蘄州で敗死し、孫守法・武大定は伯に封ぜられ、許文竜は奉郷で糧尽き死に、新城知県李翺は城陥ちて死に、張飛遠は金山衛を襲って成らず、六月、呉易は再び長白蕩で捕らえられ屈せず死んだ。
十月、金声桓が贛州を屠った。四月から囲まれ、楊廷麟・万元吉は忠誠社を設けて三万近くを集め、李永茂の粤兵で一時囲みを解き、明帝は忠誠府の名を賜ったが、汀州の変と諸援軍の潰走が伝わり、霧と雪の夜に城を登られ、砲が破裂して城は陥ちた。廷麟・元吉・郭維経は自尽し、彭期生ら文武・諸生から郷約・書工に至るまで多くが死んだ。論者はいう、この死事の壮烈さは史可法の揚州、瞿式耜の桂林と相映ずる、と。十一月、無錫の王謀は郷兵一万で常州に迫り殺され、十二月、黄毓祺・徐趨は江陰を襲い趨と十四人が死んだ。
四年、張家玉・韓如璜は東莞を回復して三日で敗れ、陳邦彦は余竜の二万で広州を攻めたが、李成棟が甘竹灘を取ると言うと余竜の兵は引き去った。洪有楨は漳浦、頼天肖は潮州、陳順・簡信は韶州、蘇来は恵州、黄奇策は新会で起こり、馬応房が順徳を取ったが成棟に再び取られ、応房と余竜は死んだ。頼熊は建陽、孫守法は寧州を回復し、張家玉は再び東莞・新安を取り、林質は徳化を取って建陽で敗死した。四月、孟喬芳は興安の伏兵で孫守法を捕らえ、守法は鉄鞭で百十人を打ち殺して死んだ。松江提督呉兆勝の反正は洩れて殺され、沈廷揚・陳子竜・楊廷枢・夏完淳ら数十人が死んだ。岑本高らは浦城で敗れ、王光泰は襄陽で反正したが四川へ走り、鄖西王は建寧・邵武を、周金湯は永州を回復した。七月、陳子壮は九江村で起こり、陳邦彦と禺珠洲に伏せて成棟の舟数十艘を焼いたが、風が変わって大潰えし長子上庸が戦死した。徐定国は懐集を回復し、八月、高明が襲われて子壮は広州で寸刻みに磔にされ、麦而炫も従って死んだ。杜璜・李皇一は肇慶で敗死し、王祥は遵義を回復した。九月、成棟が清遠を破って陳邦彦と白常燦が死に、十月、張家玉は増城で兵を竜・虎・犀・象の四管に分けて十日戦い、力尽きて野塘に身を投げた。陳世亨は瑞安、林汝翥・林垐は福清で敗死し、十二月、李長祥・王翊らの寧波の謀は洩れ、華夏・屠献宸・王家勤らが死んだ。
五年正月、金声桓が王得仁と南昌で反正し、辮髪を切らせて隆武四年と称し、董学成らを殺して姜曰広を盟主に迎え、贛州を除く全省が明に復した。朱継祚は興化を回復したが敗れて自殺し、鄖西王は建寧で敗死し守将の王祁は焼身して死に、三月、蘭州の遠長王は米喇印・丁国棟に擁されたが孟喬芳・張勇に敗れて死に、周損らは六安で敗死した。王翊は四明山に拠って大蘭洞主と号し、五営五司を立てて王江が糧を主り、周囲の城は数年門を閉ざした。四月、李成棟が広東で反正した。愛妾の張氏は内顧の情を絶つため首を刎ね、成棟は佟養甲を脅して永暦の正朔を奉じた。張先壁は靖州・沅州、陳友竜は武岡を明に復し、九月、王䵺は廬州を破ったが守れず、十一月、余応桂・掲重熙・傅鼎銓・劉士楨らは南昌を援けて落星湖に敗れ、金志達と僧了悟は東流・建徳を取って敗死し、李虞夔は姜瓖らの反正に乗じて潼関・䈬州・解州を落とした。
六年正月、譚泰が南昌を屠った。前年七月から囲まれ糧が尽き人が互いに食い、湯執中が内応して城は陥ち、金声桓は湖に、姜曰広は偰家池に身を投げ、王得仁らは市街戦に死んだ。侯応竜らは将軍寨で敗死し、三月、李成棟は贛州に利あらず信豊に退いたところを攻められ、雨で砲が燃えず河を渡って溺れ死んだ。黄毓祺は通州で再挙を図ったが銭謙益に資を断られ、江純一の密告で捕らえられ、薛継周らとともに死んだ。九月、李虞夔は平陸で潰え、姜瓖・万瑓・劉遷・王永強もみな敗死した。七年二月、鳳陽の義軍を総督した王𤐣が捕らえられ屈せず死に、皖の義軍はほぼ尽きた。八年、鄧光遠・傅鼎銓・掲重熙・呉江・余応桂が相次いで捕らえられ死に、王𦚎は奉化で捕らえられ、毎日鬚を梳り漢官の威儀を見せてやろうと言い、定海で射殺された。九月、陳邦傅が清遠衛を襲い白常燦が罵って死に、十二月、朱国楨の孫某が南潯鎮で起こり敗死した。十一年、徐敬時らは広信の九仙山寨で敗れ、十三年、王江が四明山で再び起こり敗死し、休寧の趙立言は江山を落としたが馬がつまずいて水に落ち死んだ。
年表
南京陥落後、江南・浙東・江西・福建・両広・陝西の各地で士人や郷民が蜂起し、いずれも潰えていった顛末を年ごとに列挙した篇である。順治二年(1645年)には呉易・陸世鑰・閻応元・金声・銭粛楽・孫嘉績・孫守法らが相次いで挙兵し、李成棟や張天禄の攻撃で嘉定・江陰・松江・徽州が屠られた。順治三年(1646年)の贛州陥落では楊廷麟・万元吉ら多数が殉じ、順治五年(1648年)には金声桓が南昌で、李成棟が広東で明に復帰したが、翌順治六年(1649年)にいずれも敗死した。以後は王翊・王江らの四明山の抵抗が残るのみとなり、順治十三年(1656年)までに義軍はほぼ絶えた。
年表(9件)
- 順治二年(1645年)江南・浙東・江西各地で義軍が蜂起し、嘉定・江陰・松江が相次いで屠られる
- 順治三年(1646年)贛州の忠誠府が陥落し楊廷麟・万元吉・郭維経ら多数が殉じる
- 順治四年(1647年)広東で陳邦彦・陳子壮・張家玉が挙兵するが李成棟に相次いで敗死する
- 順治五年(1648年)金声桓が南昌を、李成棟が広東を挙げて明に復帰する
- 順治六年(1649年)南昌が陥ちて姜曰広・金声桓・王得仁が死に、李成棟も信豊で潰える
- 順治七年(1650年)王𤐣が捕らえられて屈せず死に、皖省の義軍がほぼ尽きる
- 順治八年(1651年)傅鼎銓・掲重熙・王𦚎らが捕らえられ、江西の抵抗が絶える
- 順治十一年(1654年)徐敬時らが広信の九仙山寨で挙兵するがたちまち破られる
- 順治十三年(1656年)王江が四明山で再挙するが敗死し、趙立言も江山で死ぬ
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- 第1.0版(2026-09-27) 初版