清史紀事本末瑤族平定の役(平傜之役)
要約
道光十一年十二月、湖南江華の傜人趙金龍が両河口を掠めた。傜は山峒に住み、漢民と役人に虐げられて怨みを積み、天地会に牛や穀物を掠められたので、金龍は復讐を唱えて六、七百人で天地会の徒二十余人を殺し、県令の林先梁らが黄竹寨から襲って十四人を殺した。
十二年、傜は洪江・黄竹の寨を破り金龍は三千を擁した。二月、湖南提督の海淩阿は池塘墟の伏兵に全軍壊滅して殺され、馬韜・王鼎銘も死に、土傜が呼応して数万と号した。盧坤・羅思挙・余歩雲に合軍させ、詔により平野に誘い出す策をとり、羅思挙が南走を遮り挟撃して傜を羊泉鎮に追い出した。四月、大雷雨に乗じて進み火弾と大弩で傜六千を斃し、降を乞うた趙文鳳を偽り許して攻め、金龍も熊生発に殺された。視軍に来る禧恩を待たず戦ったので禧恩は怒り、金龍の死を詰問したが屍と佩剣を示されやめた。
ついで連州の趙青仔の仇討ちも盧坤が破って磔にし、七月、広西賀県の盤均華の乱も祁𡎴が芳林渡に破って処刑した。八月、八排の傜が、蔡天禄の判じた銀千二百両を漢民が払わぬので民家を襲い、総兵の余徳も夜襲された。硝薬の失火と奏した李鴻賓は実情を探られて逮えられ、禧恩が総督を代行した。九月、禧恩は盧坤の着任前に功を立てようと楊振麟の策で洋銀・塩を与えて傜を買収し、投降させて平定を奏し、帝は速さを賞して輔国公に封じた。十月、曲江・乳源の土賊と傜の結託も平らげた。
十六年二月、武岡州の傜人で生員の藍正樽が、教えを伝えて同志の潘明徳らを呉栄光に処刑されたため三千で州城を攻めた。張大宏らが撃破して家族や軍師を擒え、四月、巡撫の訥爾経額が千余名を殺獲したが正樽は逃れた。十七年、訥爾経額は正樽が郷勇に殴り殺されたと奏し林則徐の再調も同じだったが、帝は疑って訥爾経額を三等侍衛に降し林則徐を五級降し、正樽父子の捜索を命じた。
二十七年十月、湖南新寧の傜人雷再浩が李輝らと挙兵し官役を多く殺傷したので陸費瑔に討たせた。十一月、鄭祖琛が全州で連破して頭目の李世得を殺し、再浩も捕らえられ、道州に挙兵した世得の子の加輝も敗れた。十二月、灌陽の郷勇が左広秀ら、道州の軍が李魔旺らを捕えて平定した。
二十九年十一月、広西五排の傜の李沅発が新寧の牢を破り城に拠り、知県の万鼎恩と鄭祖琛の遣わした段丙南らが死んだので、馮徳馨に自ら討たせた。十二月、馮徳馨は四十余日囲んで傜が退いたのを回復と奏し沅発の焼死も報じたが実は死なず、弟の沅宝がまた新寧を攻めた。黄三らは癩子山に拠り、大絹峒では張新銘らが敗れ熊釗らも殺され、裕泰に督軍させた。三十年二月、傜は龍勝に及び、永州・鎮筸の営に突入して武器を奪い瑪隆阿ら諸将も戦死したが、馮徳馨はまた誤奏した。黔楚の境に拠った沅発を、五月、湖南提督の向栄が金峰嶺に誘い込み、崖底に落ちたところを擒え、残党も殲滅して平定した。
編者はいう、この役は三省の兵力を尽くし前後二十年でようやく鎮定したにすぎず、国の元気は損なわれ兵乱の機は動いていた。だから一月も経たぬうちに太平軍が金田村に起こった、と。
年表
湖南・広東・広西の三省にまたがる傜人の蜂起と、その鎮定に費やされた道光十一年(1831年)から道光三十年(1850年)までの約二十年を扱う。漢民と役人による虐待と偏った裁きへの怨みから江華の趙金龍が挙兵し、提督の海淩阿が池塘墟で全軍壊滅して事は拡大したが、盧坤・羅思挙らが羊泉鎮で傜衆を包囲殲滅し趙金龍は敗死した。その後も趙青仔・盤均華・藍正樽・雷再浩と蜂起が続き、最後に李沅発が新寧城を占拠して官を殺したが、湖南提督の向栄が金峰嶺で生け捕って平定した。三省の兵力を尽くした鎮定であったが国の元気は損なわれ、まもなく金田村の太平軍蜂起を招いた。
年表(7件)
- 宣宗
- 道光十一年(1831年)江華の傜人趙金龍が衆を集めて両河口を焼き掠め、天地会の徒を殺す
- 道光十二年(1832年)海淩阿が池塘墟で全軍壊滅したのち、盧坤・羅思挙が羊泉鎮で傜衆を破り趙金龍は敗死する
- 道光十六年(1836年)武岡州の傜人藍正樽が三千を集めて州城を攻め、訥爾経額が一党千余名を捕殺する
- 道光十七年(1837年)藍正樽の死の真偽をめぐり訥爾経額は降等、林則徐も五級を降されて留任となる
- 道光二十七年(1847年)新寧の傜人雷再浩が挙兵し、陸費瑔・鄭祖琛の討伐で捕らえられ地方が平定する
- 道光二十九年(1849年)五排の傜の李沅発が新寧城に拠って知県の万鼎恩を死なせ、馮徳馨が虚報を奏する
- 道光三十年(1850年)向栄が李沅発を金峰嶺に誘い込んで生け捕り、残党を殲滅して地方が平定する
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- 第1.0版(2026-09-27) 初版